多様な学びの実践事例

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kikka☆link(きっか・リン)フェス2026開催レポート

2026年10月27日 公開

9月4日、松本市の信州大学松本キャンパスで「kikka☆link(きっか・リン)フェス2026」が行われました。

フリースクールなどの運営者やスタッフ、利用する子どもたち、保護者らが一堂に会し、交流や連携を深めることを目的にしたイベントで、開催は昨年に続いて2回目となります(昨年の様子はこちら)。今回は、昨年の開催後に寄せられた「こんなことをやりたい」という声をもとに内容をブラッシュアップ。県や教育関係者らでつくる「信州学び円卓会議」の「ともつくフォーラム」とコラボした全体会、子どもたちによるライブや探究活動のプレゼン、「親の会」を体験できるカフェブースという3つの取り組みを加えました。

当日は県内の25団体が参加。県内外から200人を超える人が集まりました。主催した信州フリースクール居場所等運営者連絡協議会代表の村上陽一さん、NPO法人Hug理事長の篠田阿依さん、NPO法人Hugに通う中学3年生の後藤可菜さんと共に、その様子を振り返ります。

「やりたい」の声から生まれた、2年目のフェス

今回の企画を考える上で大切にしたのは、実行委員会だけで決めるのではなく、協議会全体の声をできるだけ取り入れることでした。

村上さん
「皆さん県内各地に散らばっているので、なかなか意見を集めるのは難しいんです。今年は早い段階からアンケートを使って、どんな企画をメインにするか、子どもをどこまで中心にするかなど、協議会全体に意見を聞いて、できる限り取り入れていこうという方針を取りました」

昨年の振り返りから見えてきたことの一つが、子どもたちの関わり方。ボードゲームやカードゲームができるプレイパークなど、子どもたちが楽しめる企画を用意していましたが、お客さんとして「遊んでもらう」のではなく、子ども自身が主体的に取り組める企画もあった方がいいとの意見がありました。そこで取り入れたのが、ライブや探究活動など、日頃の取り組みを子どもたち自身が発表する「ステージ発表コーナー」です。

さらに、以前から協議会のテーマとなっていた「保護者とどうつながるか」を形にするため、親の会を体験できるカフェブースも用意。全体会は、「信州学び円卓会議」の「ともつくフォーラム」とコラボし、「子どもたちが自分らしく進路を選ぶための学び・評価の在り方」をテーマに、参加者がグループに分かれて意見を交わしました。

村上さん
「kikka☆linkという場所の持つ意味は、本当に多面的です。子どもたちの発表の場にもなってきたし、親同士がつながる場所にもなってきたし、運営者同士が年に1回でもリアルで集う場所でもある。
今回の全体会のテーマは、すぐに答えの出ない、とても悩ましいものでしたが、実際に困っている子どもたちをどう支えるかという、制度のようなハードルの高いところにも声を上げていくことが、行政との関係という意味でも重要なのかなと思います」

「今は大丈夫だよ」――自分の言葉で伝えたこと

後藤さんは「ステージ発表コーナー」で登壇して、プレゼンテーションを行いました。「過去の私から未来の私へ」と題し、小中学校で経験した悲しい出来事、そのときの気持ち、そこから出会った先生や居場所、フリースクールについて、自分の言葉で伝えました。不登校になったことをきっかけにフリースクールや不登校について興味を持ち、フリースクールに通う子どもや保護者を対象に行ったアンケート調査についても紹介。最後には、校内教育支援センターの先生になりたいという将来の夢を語りました。

後藤さん
「こういうこともあったけど、今はこうして元気に生きられているから『大丈夫だよ』ということを伝えたいと思っていたので、そんなに発表しにくいところはなかったです。あんまり緊張もしなかったし、自分の気持ちは全部出し切ることができたかな」

発表に向けては、家や学校で何度も練習。普段利用している校内教育支援センターの先生にも原稿を見てもらったそうです。「学校に行かない」のか「学校に行けない」のか。当事者にとって大切な言葉の違いにも気を配りながら、伝え方を考えたと言います。

もともとはアンケートの調査結果を中心に発表する予定でしたが、応募していた「統計グラフコンクール」の審査前だったため、直前に内容を変更することになりました。

篠田さん
「何を話そうか、と考えた時に、自分自身の気持ちを届けてみたいと後藤さんから言ってくれたので。本番ではしっかり発表してくれました。
ステージを見ていた子どもたちから、『来年は出てみようかな』と言う声もあったのが良かったです。今後、子どもたちがより関わっていく流れにもつながってくればいいなと思います」

ステージではほかに、安曇野市のフリースクール「LIGHT HOUSE SCHOOL」に通う子どもたちによる「ライスクキッズバンド」の演奏と、木曽町のオルタナティブスクール「キソツク子どもの学校」に通う2人による蚕の成長についてのプレゼンテーションもありました。実は当初、バンドやダンス、歌などの披露も想定していたそうですが、人前に立つことをためらう子どもたちも少なくなかったとのこと。だからこそ、今回の出演者のパフォーマンスには大きな意味があると言います。

村上さん
「最初にやってくれた人たちの功績は、すごく大きいですよね。こういう場で皆に見てもらうというのは、内容だけではなくて、そこに向けて練習したりすることにも意味があります。
当事者の人が言語化することの難しさは、支援している皆さんが常々感じています。それを中学生の段階でちゃんと言語化して、堂々と発表してくれている姿というのは、ものすごくインパクトがあったと思います」

「横につながる」ことの心強さ

親の会による交流スペースは当初、参加する4つの親の会ごとにスペースを分ける予定でしたが、自然と一つの大きな輪ができ、参加者だけでなく親の会の運営者同士の交流にもつながりました。

村上さん
「不登校の子どもを持つ保護者にとって、同じ経験を持つ人とのつながりが大きな支えになる一方、自分から親の会を訪ねることにはハードルもあります。
悩み事を自分から相談に行くって、なかなか簡単なことじゃない。その一方で、アンケート調査では『親の会で救われた』という声はとても多いんです。
お医者さんやカウンセラーの言葉もいろいろあるけれど、同じ立場で経験した人たちの気持ちを聞けることには、すごく意味がある。それは実感としても数字としても感じていました。だから、少しハードルを下げて、親の会を体験できる場所みたいなものがあったらいいなと考えたんです」

kikka☆linkという場所が、子ども、保護者、そして、県内の運営者同士がつながる場所になっている一方、県内各地にフリースクールやオルタナティブスクールが増えてきているとはいえ、現状ではまだまだ地域差があります。

篠田さん
「南信地域ではフリースクールが少なく、以前は孤立感もありました。協議会が立ち上がって、kikka☆linkフェスを準備する過程で、困った時に相談ができたり、対話や交流が生まれたりして、横のつながりを感じられる機会がたくさんありました。運営者としても、すごく心強い流れだと思っています」

昨年のフェスで生まれたつながりも続いています。今年も信州大学の学生たちがボランティアとして参加。教職を目指す学生や教育学を専攻する学生が、学校外で学ぶ子どもたちや運営者と出会う機会にもなりました。

そして今年、「発表する側」だった後藤さんに来年やってみたいことを尋ねると、「スタッフとしても参加してみたい」と話してくれました。

後藤さん
「プレイパークで、小学生とか中学生と一緒に遊ぶスタッフをやってみたいです」

「リアルで会う場」として始まったkikka☆linkフェス。つながることから始まったフェスは2年目を迎え、フリースクールの運営者側だけではなく、子どもたちや保護者の人たちが関わり、一緒に「つくる場」へと少しずつ変化しています。来年はどんな人が、どんな思いを持って「つくる側」に加わってくれるでしょうか。そこからまた、新しいつながりが生まれていきそうです。