多様な学びの実践事例

写真: 森の学校トゥルカ 櫻林美沙枝さん

森で育む「自律と共生」、自然体験と学習を両立する新たな学びの場

森の学校トゥルカ 櫻林美沙枝さん
2026年1月23日 公開

原村深山、1200坪の森の中に、オルタナティブスクール「森の学校トゥルカ」はあります。トゥルカが目指すのは「自然体験と学習の両立」。基礎学力の定着に力を注ぎながら、野外活動を通して「生きる力」を養う、新しい学びの場を実践しています。運営する一般法人トゥルカジャパン代表理事の櫻林美沙枝さんにお話を伺いました。

森の中で過ごすと、自然と生き生きした表情になる

対象は小・中学生で、現在、定期的に通っているのは、小学1年生から中学1年生までの13人です。活動日は週に3日。月曜と水曜は「トゥルカの森」で、春から初冬までは終日森の中で、雨天時は室内で活動します。
木曜は村の体育館や子ども・子育て支援センター「はらっぱ」で、運動と学習をしています。カリキュラム制を導入して、学習、アート、英語、調理、創作などと充実した内容になっています。

一番の特徴は、自然体験と学習の両立です。「森の学校」という名前から、体験重視のイメージを持たれることもありますが、学習面もしっかり支援しています。学習内容は各々に合わせて、まずは子どもと、その後は保護者の方と面談して、どんな学習をしていくのかを決めています。教科書を使う子もいれば、私が用意したプリントで勉強する子もいます。森の中で過ごすと、皆、自然と生き生きした表情になって、集中力も高まります。月1回の「トゥルカデー」は、小屋作りや山登り、草木染め、木工教室など、子どもたち自らがやりたいことを決めて取り組んでいます。

大切にしているのは、自律と共生。自律という文字を見ると、なんだか厳しそうに感じるかもしれませんが、自分を律して、チャレンジできるような人に育ってほしいと考えています。社会の中で生きていく上では、努力したり、頑張ったりすることが必要。私たちはそのサポートをしたいと思っています。

「学校をつくりたい」という思いを胸に

私は生まれも育ちも東京で、大学院を修了してからは中高一貫の女子校に15年ほど勤務しました。生徒と一緒に過ごす時間は楽しかったですが、学校のカリキュラムを遂行するために、自分のやりたい授業ができないことに、もどかしさを感じることもありました。その後、学校を辞めてしばらくしてコロナ禍になり、父の別荘がある原村に移住。2024年4月にトゥルカを開校しました。

実は教員時代からずっと、学校を作りたいという思いを胸に抱いていました。それがこの森を生かす形で実現しました。トゥルカの森はとても美しい森で、訪れる人を癒す不思議な力があると感じています。この森で過ごしながら、学習やさまざまな体験活動をすれば、特色のある学校になると確信しました。どちらかというと学校に行けない子どもたちのためというよりは、学校以外の学びの場所にしたいという思いが強いです。

初年度に集まったのは、3、4人の子どもたちでした。口コミで、徐々に子どもたちが増え、スタッフも増えていきました。現在は、私を含め5人のスタッフがいます。

公立校以外の新たな選択肢として

2025年7月には子どもたちが企画・運営をした地域交流イベント「トゥルフェス」を開催しました。子どもたちもお菓子や雑貨を販売するお店を出して、収益を上げられるように頑張りました。地域の方々も250人ほど来てくれて、それをきっかけに交流も生まれましたし、子どもたちも主体的な学びを体得することができました。

保護者の方々からは、トゥルカに通うようになり「子どもの表情が明るくなり生き生きしてきた」「学習のサポートもしていただけるのがありがたい」というような声をいただいています。でもまだ、理想には届いていないもどかしさも感じています。子どもたちの居場所であることは大切ですが、「公立校か、それ以外か」というような選択肢にはしたくありません。自律と共生という理念を理解して、「学校に行けないから」ではなく、「トゥルカのほうが合っている」と選んでもらえたらうれしいです。

将来的には、学校法人にして、月曜から金曜まで活動できるような学校としての機能がある場所にすることを目指しています。子どもは、ちょっと頑張ればその先に大きな可能性が広がっています。広大なトゥルカの森の中で、仲間と共にさまざまなことを学んでいってほしいです。公立校以外の新たな選択肢として「トゥルカに入学させたい」と選んでもらえるような学校にしていきたいです。